研究の概要

目 的

人間は外部からの情報の助けを借りて自らの行動をコントロールすることを可能にするという外在主義的な知識観を基にすれば、伝承すべき知識はその人の道具や準備された環境から学び取ることができる。本研究では、熟練技能者が自らの手で技能を抽出し可視化できる伝承指導者となるための育成モデルをつくることを目指す。その結果、時代変化や進化に対応する場合でも、自らが熟練技能の知を環境から読み取り再配置することで、継続した日常の学びによる技能の伝承環境を構築することができる。

内 容

日本のモノづくり現場の徹底した観察、知識を共有する手法の進んだ海外調査を通して、技能者自身による技能の正体の解き明かしと学びの日常化環境づくりの有効性を明らかにし、実社会における問題解決の一助とする。

  1. 外在主義的な可視化手法を明らかにする
    技能の可視化とは、その熟練度を賛美することではなく、作業の段取り、段取りのための準備、仕事環境、道具や材料の配置、作業を効率よく進めるための自作のジグ、模型やモノの配置、安全や失敗の回避のための環境を明確にすることである。本研究では、これらは知識の「痕跡」としてとらえ、痕跡を抽出しそれらが示す知識を再現し、具体的に見て、触って、確認できる手法の有効性を確認する。
  2. 高い技能をもつ職人自身がその技能を外化できるようにする。
    自分自身の技能をただ繰り返しマンツーマンでやってみせるだけの伝承方法ではなく、自分自身の技能をどうすれば可視化できるのか、自分の技能とはなにかを自分自身で把握し、見つけ出す方法を提示する。
  3. 学びの日常化環境を構築する
    可視化した知識を具体物として再作成し、環境に配置する。研究では配置した環境で作業する状況を当初の現状と再配置した後の利用行動や日本と海外で可視化教材による学生の理解度などを比較してその効果を評価する。
  4. 技能指導者の育成モデルの提案